押入れの痛み

2020年度の半分が

終わったいま

押入れを掘り出している。


整理しだす

一気にひっくり返さないと

気がすまない。


この家に来るまで

何度も引越しがあった。


そのたびに

段ボールにものを詰め込み、

詰め込んだものたちは

再び開かれることはなく

また新しい住まいの

押入れに静かに

押し込まれただけだった。



だから

押入れには

懐かしさや

悲しみが詰まっている。



子どもの小学生時代。


たくさんのプリントやノート、

走り書きに書いた

ただのメモ程度のものも

大事にファイルしている。



なのに

中学生、

高校生。


何も痕跡がない。

わたしも何も思い出せない。



この頃は

モラオが不倫真っ最中


モラに不倫にマザコンの

三重攻撃。

わたしも

子育てを落ちついて

できる環境じゃなかった。


痛みは過去になったわけではなく

自分自身が心の持ち方に

折り合いをつけて

逃げているだけの今。



そして、

目に入るのは

子どもが読んでいた

大量の漫画本とゲーム。



子どもの小学生時代から

高校生時代。


モラオが激怒して

家の中がいつも

ピリピリしていた。

険悪な雰囲気が

休まるときがなかった。


こども心に

どれだけ不安だっただろう。


寂しかっただろう。


ひとりで

部屋の隅で

好きな漫画を読んで

怒鳴り声を

耳に入れないように

していたのだろう。



なのにわたしは

当時の子どもの心を

わかっていなかった。


結局は幼稚で

自分のことしか

考えない親だった。


モラオとそこだけは

似ているんだよ。


子どもは

寂しさを忘れるために

こんなにたくさん

漫画を読んでいたのだろうか。


スマホも持たない昔だったから

見知らぬ世界に

繋がらなかったのは

よかったけれど


無邪気な漫画からは

痛みが伝わってくる。

あの頃は、

漫画ばかりと叱ったり

好きなものに

理解を示そうと

しなかったっけ。



たくさんのモノから

当時の寂しさが。

伝わってくる、

モノの持つ記憶が。


だから古いものを

整理しだすと

とても疲れる。



月日だけが経ち、

子どもは家を出て

ひとり暮らしをしている。

狭くてもやっと

自分だけの

住まいなんだろうね。



いつでもわたしも

ここから撤収できるように

スッキリとモノの整理を

しなければ。